「揉むと……大きくなると聞くけど……」

 私は自分の胸に手を添えてみる。

「…………。でも、揉むって……」

 いろいろ指を動かしてみるけれど、うまくはいかない。
 ……そもそも、揉める人って既に結構大きいんじゃ……?
 周りから、いろいろ寄せ集めてはみるけれど、必要量には足りていない気が
 する。」

「うーん……。でも、やらなかったらきっとずっとこのまま……だし……
 毎日続けたら、大きくなったりするの……かな……」

 さらけ出した胸に手を添える。片手を置いてみても、手のほうが大きくて
 指が余る。

「ん……、う……」

 手の平で真ん中のほうに寄せながら、胸をこねるように揉んでみる。

「ん……、これで……あってる、のかな……?」

 私のサイズが小さすぎるせいか……特に何も……
 なんだか、不毛なことをしている気がしてくる。

「そう……いえば……」

  好きな人に揉んでもらわないと意味がない……と聞いたことがある。
 確かに……それなら……、なんとなく納得がいく……

 でも……、誰かに揉んでもらうのと、自分で揉むの……何が違うのかな……
 男の人のほうが……手が大きいとか? まさか……
 でも……それじゃあ、いつまでも兄さんに振り向いてもらえないし……

「……好きな人に……、触られてると思って……? それなら……いいかな……?
 ……兄さん……」

 少し目を伏せ、想像してみる。
 兄さんが、私の胸に……手を伸ばしてくれているところ……

「はあ……、兄さん……」

「胸……小さくてごめんなさい……」と言う私。兄さんは、優しく微笑んで
 くれる。
「関係ないよ」……そう言って、私の髪を撫でて……私を、抱きしめて……

「私は………兄さんに……んっ……」

 私よりも一回り大きい、兄さんの手……
 兄さんの手が、私を包み込んでくれている……。そんなふうに考えながら、
 触れているだけなのに……

「はあ……、ん……。なにこれ……」

  兄さんが傍に居てくれてる……
  そう考えるだけで胸がすごくドキドキして……、鼓動が、早くなる……