「わーっ、可愛い! 見て見て、可愛いのいっぱいっ」
「うん、可愛い」

 言いながら僕はペンダントを眺めるふりをしてこっそり、ペンダントの
 値札を裏返してみる。
 ……このくらいなら……まぁ……

「可愛いのいっぱい……! 目移りしちゃうね……!」
「奏菜ちゃん、こういうの好きなの?」
「好きだよ〜っ。結構いっぱい持ってるんだよ。今度見せてあげるね。
 んー、なんか買っちゃおうかな……。そろそろ暑くなるし……
 柊哉くん、見てみてー」

 奏菜ちゃんは近くにあった帽子を被り、僕に見せてくれる。。

「どう? どう?」
「おお、可愛い。大人っぽく見える。
「本当? 嬉しいなー。
 大人っぽい奏菜ちゃんどうですか! 魔性の女っぽいですか!?」
「えっ、いや、魔性ではないんじゃないかな」
「えー……魔性の女じゃないのかー……」
「えっ、何が残念なの……?
 というか、その帽子で魔性の女っぽさは出ないと思うけど……」
「そっかー。残念だなぁ」

 「いいの? 魔性の女ではなかったけど、可愛かったよ」
「うん。リボンがね、ちょっとくしゃってなりそうで。帽子は今度探そうっと」

 奏菜ちゃんは毎日頭に大きなリボンを付けている。確かにああいう帽子を
 かぶると、潰れてしまいそうだ。

「うーん、何がいいかなー」

 奏菜ちゃんはそう言って、リボンを頭に当ててみる。

「うーん、リボンはもう頭に付いてるからなー。
 あ、これ、ひなちゃんとか似合いそう。うーん、私には似合わないかなぁ……
 あっ、これ! ……これ、これ可愛くない?
「いいね、可愛い。奏菜ちゃんっぽい」
「わーい、奏菜ちゃんっぽい嬉しいねっ。
 えへへ、可愛い……可愛い……っ。
 これ、ちょっと買ってくるね。待ってて」

「あ、ちょっと待って」

「ん、どうしたの?」
「それ貸して」
「え……、うん」

 僕は奏菜ちゃんからピンを受け取って、レジに持っていく。

「あ……」

「柊哉くんっ、柊哉くんっ、お金……」
「はい、奏菜ちゃん」
「えっと、お金……」
「あんまり高価なのは買ってあげられないけど。プレゼント」
「え……、えっと……いいの……?」
「うん、思い出になる?」
「わぁ…………
 なるっ! なるっ!! ありがとうっ!! 大事にするね!!」
「うん、喜んでもらえて嬉しい」