「時間、あんまりないんだよ。あたしがこの体に入ってるのだって、みんなには
 内緒なの。ばれたら、妬まれちゃう」
「先生が……まつりにって?」
「うん、あたしなら、大丈夫だろうって言ってもらえて」

「ねえ……、キスしよ?」

「えっ……!?
 だ……、ダメだよ! 南須原さんの、体なんだから……!」
「うー、やっぱりだめかぁ……
 じゃあ、触るだけ。手ぇ、つなぐだけ。それだったら、いいでしょ?」
「……それだけ、なら……いいの……かな」
「やったぁ!
 ……はぁ……あったかい……」
「ちょっと、まつり……! 近すぎる、かも……」
「お願い……、もうちょっと、だけ……
 ……誰か、中にいたら……、人の体に入ったりなんか、出来ないもん。はじかれちゃう。
 だから……。
 だから……少しだけ……。お願い……」

「まつり……
 大丈夫……なの……? 南須原さんが、戻ったとき……記憶、とか……」
「大丈夫……だと思う。多分」
「た、多分って……」
「あたしの感情までは、残るわけじゃないし。なんとなく……かな。うん。
 ……何か言われたら、その時は、ちゃんとあたしから説明するから……。悪いことは、
 しないから……」

「あったかいね……。これが、柊哉の体温なんだ……。
 匂いも、する……。えへへ……。
 鼓動の音……、ちょっと大きいかな……? とくんとくんって……。
 はぁ……、あたしも、ドキドキしてるよ……聞こえる……?
 少し、息苦しい……。切ないね……」
「まつり……?
 戻ろう? そろそろ、戻らなきゃ……」

 なんとなく、いけない予感がした。悪い予感がして……
 これじゃ、だめだ……。まつりにとって、とても良くない気がする。