瑚子と会ったのは5カ月程前。衣替えも控えた、5月の終わりごろのことだ。
 物音がして立ち寄った1年生の教室……
 そこに、女の子がいた。教卓の下、体を丸めて、そこに収まっていた。

「……だ、大丈夫か……っ!?」
「あ……」
「すぐ解くから!」
「い、いえ……あの……っ……」

 俺はその時、すごく焦っていた。
 彼女の手首は制服のリボンで縛られていた。
 誰かにやられたのだろうかと、俺はその時考えた。
 小柄な可愛い女の子……。胸がはだけていて、下着も見えている。
 ……いじめだろうか……?

「誰かにやられたのか……!? クラスメイトか?」
「い、いえ……あの……違います……」
「じゃあ、部活の先輩とかか……? どうしてこんな酷いこと……」
「い、いえ、本当に違うのです……あの……すみません、信じてもらえないかも
 しれませんが、自分でやったのです……」
「もしかして、そう言うように強要されてるのか……?」

 確かに、突然現れた男である俺に、本当のことは言えないだろう。

「そうだ。俺に話せないなら、カウンセリングルームに行って……」
「い、いえ、あの、本当に、私、自分でやったのです。
 私、教室でちょっと勉強してて……。宿題とか、あんまり家でやらないので……。
 でも、その……」
「何かあったのか? 誰か来たとか……? そいつに命令されて……」
「いえ、誰もいない教室というシチュエーションに燃えてしまったんです」
「…………」
「教卓の下……覗きこまないとわからない場所に押し込まれて、制服のリボンで
 手首を縛られて…… 下着が見えてしまっているというなんとも恥ずかしい場面で
 ここに置き去りにされて、ご主人様が戻ってくるまでここで待ってないといけないんです」
「あ、あの……ご主人様って……、何を……」
「あ、妄想です。今のところ実在しません」

 ……帰りたい。
 すごく……変な子と出会ってしまった。