「お待たせ!」
 休日、真奈に買い物に付き合うように言われ、赤池駅にやってきた。待ち合わせ場所に、
 真奈は黒い私服で現れる。
「お……、私服だ」
「えっ、何? ウエイトレスで来ると思ったの?」
「いや、違うけど。初めて見たなあって」
「あ。まあそうだねぇ」

 いつも着ているウェイトレスの制服は、少し丈の長いスカートでおしとやかな感じだ。
 けれど、私服は黒が基調で、ミニスカートで、少し……なんというか……。

「なんていうか……、かなりイメージ違うな……」
「そお?」

 ……派手っていうか。まあ似合うけど。

「今、失礼なこと考えてるでしょ?」
「そんなことはない。似合う似合う」
「本当……?
 まあ、言わんとしてることもわかるけどね。お父さんが厳しくてさ。
 あたしはもっと、可愛いウェイトレス服のほうがいいと思うんだけど」
「あれも可愛いと思うけど、どういうやつ?」
「なんかもう、流行最先端みたいな! ミニスカートで、ふわふわでぇ。
 そしたらもっとお客さんも増えると思うんだけどっ」
「そんなのあるのか……?」
「あるあるっ。あとね、『お帰りなさいませ』って言うやつで!」
「それは根本的に間違ってる!」
 あのシックな喫茶店を、この子はどうするつもりなのか……。
 マスターが反対するのも最もだった。

「さて。まずは買い物しちゃおう。久しぶりだし、いっぱい買い込もうっと」
「そんなに買う物あるのか?」
「うん。久しぶりのお休みだしね。お洋服に下着に、あ、お茶とかも見たいし、あとはぁ……」
「え……、そんなに……?」
「カラオケも行きたいし、ボーリングも行きたいし……!
 時間、全然足りないっ。さあっ、行くよー! ごーごー☆」

 真奈はそう言って歩きはじめる。
 時間は……2時間くらいしかないはずなんだけど、そんなに回れるのか……?