噂話をしている少女たちを追いかけて……俺たちは、近くにあった教室に入る。

「ここは……?」
「……女子更衣室みたい……」
「ま、まずいだろ……! 俺、出て……!」
「いや、少しだけだし……あの子たちが通りすぎるまでここで待とう。
 新くんは一応、ロッカーに……」
『あー、早く着替えなきゃ。更衣室、開いてるかな?』
 外から、少女の声が聞こえる。……嫌な予感がした……。
「え、着替え……!?」
「あっ、新くんっ! やばい!」
「うおっ!?」

 少女たちは元々女子更衣室に行く予定だったみたいだ。
 そして、それを知らなかった俺たちは……

「あ、新くんっ、もっと奥行けないかい……!?」
「無理に決まってんだろ……! なんで入ってくんだよ……!」
「だ、だって……! びっくりして……」
『あ、誰もいないっ。ラッキー』
「さっきの女の子たち……、通りすぎるかと思ったら、更衣室に向かってたのか……」
「うう……ごめん……」

 女の子たちは着替えながら、気になる噂話をし続けている。
 事件に、関係があるのだろうか……?

「何の話なんだ……?」
 霧架が、俺の傍で小さく呟く。
「…………俺、それどころじゃないんだけど……」
「い、意識させないでっ!」
 霧架の体が……俺のすぐそばにある。こんなにも、密着してる。
 ……やばい。これは、やばい。ちょっといい匂いする。やばい!!!
 でも……霧架がここを飛び出してしまえば……
 霧架はなんとか許されたとしても、俺は無理だ。
 死ぬ。絶対死ぬ。退学じゃ済まない。死ぬ。やばい!!!

「どういうことだ……? うう、集中して考えたいのに……! 新くんめ……!」
「俺のせいかよ……!」
「ひゃうっ……あ、新くん……手が……当たってる……」
「ご、ごめん……我慢、してくれ……もうちょっと、だから……」
「う、うう……」

 霧架は涙目になりながら、仕方なく俺の体にぴたりとくっつく。
 更衣室内での様子は……見えたらまずいんだけど、見えない。
 着替えに、どれくらいかかるんだろうか……?

「……は、早く……終わって……」