……俺が真奈に連れてこられたのは……風呂だった。
 ……え、どういうことだ……?
「んー、あったかくて、気持ちいいね」
「これって、どういう場所なんだ……?」
「うーん、一応……、銭湯? 公衆浴場?」
「公衆浴場……?」
 ちょっと、俺の知ってる銭湯とも公衆浴場とも違った。

「ほら、大浴場だとどうしても男女別だから、カップルはあんまり来ないし
 ……楽しめないし……。
 あと、家族連れで幼い子がいると、大変でしょ?
 騒いで迷惑になっちゃったりするし。
 それで、ここ、1階は大浴場なんだけど、2階以上は個室で、家族風呂になってるの。
 超人気なんだって。予約しないと来れないんだからっ」
「へえ……」
 確かに、需要があるのはわかる気がする。
 子連れの家族では、やっぱり大浴場は行き辛いこともあるだろう。
 まあそれ以上に……、カップルに人気なんだと思うけど。
 広めのお風呂に二人きりは……、かなり魅力的だ。
 ラブホの休憩より安そうだし……。
「えへへー、新とお風呂、嬉しいー。お互い実家だし、家だとお風呂場小さいし!」
「ああ、こういうのはいいな。外、寒かったし、あったまる……」
「そうだよねー。お風呂で、ぬくぬく〜。
 ……それにしても……じーっ……」
「な、なんだよ……」
 真奈はなぜか俺の体をじっと見つめてくる。
「いや、新の体ってちゃんと見たことなかったなあ……とっ。
 する時って結構余裕ないと言うか暗かったりと言うか……」
「あ、あんまり見るな……。運動もしてないし……」
「いやいや、そんなことないよっ。結構引き締まってると言うか……」
「指でつつかないでくれ……っ!」
「いやー、あんまり見る機会ないから……。おお、ここはちょっとぷにぷに……。
 この脂肪が今はいいけどおじさんになると取れなくなったり垂れてきたりするんだね」
「運動する! 超運動するわっ!
「えー、ぷにぷにー」
「やめろ……!」
 ……超辛くなってきた。運動は……しておこう……!
 真奈は体をくっつけ、俺の肩に体を預けてくる。
「新ぁ……なでなでして?」
「ああ……よしよし」
「……あたし、頑張ってる?」
「ああ、真奈は凄く頑張ってるよ。偉いな……」
「本当……? ……嬉しい……。しばらく、ゆっくりできなかったから……」

 正月もあったし……真奈にも、いろいろあったから……。
 こうやってゆっくりできるのは、久しぶりだった。

「えへへ、心も体もぬくぬくー。
 えへへー。新と一緒、楽しい〜っ。
 そうだっ、新、来て来てっ
 。一緒に体洗おうっ?」