「……何、してるんだ?」

まぁ、見ればわかりそうなものなのだけれど、一応そう尋ねてみる。

灰奈 「えっと……、お掃除です」

やっぱりそうなのか……

灰奈 「すみませんっ、それはわかりますよね!
 ええと、今は食堂の窓のお掃除をさせていただいてます! ぞ、雑巾でっ」
「いや……、それもわかるけど……」
灰奈 「あっ、ちゃんと今使っている椅子は降りて掃除しますよ!」
「そういうことは言ってません」
灰奈 「あ、あれ? ではどういうことだったのでしょう?」

なんというか大人しくていい子だと言うのはわかるけれど、たまに会話が成り立たない。
多分俺が思うような疑問点は、まったく頭にないのだろう。

「なんでだ? みんなは自由に遊んでいるだろ? どうして灰奈だけ掃除してるんだ?
もしかして……、無理矢理やらされてるとか……」
灰奈 「そんな! そんなめっそうもございません! 違います違います!」
「はあ……」
灰奈 「ちゃんと説明していなくてすみませんでした。私、お掃除が大好きなんです」
「……そうなのか……」
灰奈 「はいっ、私、あまり運動もできないですし、楽器も苦手なので……
 この時間はいつもみなさんのためにお掃除をさせていただいてます!
 このお屋敷ってとっても広くて……
 毎日2時間ずつお掃除しても全然終わらないんですよ! とっても大変なんです!!」
「2時間!? いくら掃除が好きだからって……」
灰奈 「あ、でも皆さん本当に、出来る範囲でお手伝いしてくれますし、おしつけられてるとかではないのですっ!
 わ、私のせいで皆さまが悪く言われるのは……!」
「だ、大丈夫、なんとなくわかったから……」

俺、この子だけは結構普通だと思ってたけど、そんなことはなかったみたいだ……

「それにしても……そういう服も着てるし……、誰かに奉仕するのが好きなのか?」
灰奈 「そういう服……、ですか……?」
「だって、それ……、メイド服、だろ?」
灰奈 「メイドさん……ですか? 違いますよ〜、紡ちゃんが作ってくれたんです!
 フリルエプロンがとても似合う、エプロンを取ってもとても可愛い特別なお洋服なんですよ〜」
「え? ……ちょっともう一回言ってもらってもいいか……?」
灰奈 「ですから、確かにそんなふうにも見えてしまうかもしれませんが、
 このお洋服はエプロンがなければ普通のお洋服なのです。
 お洋服に合うように、紡ちゃんがエプロンを作ってくれたんですよ〜。
 紡ちゃん、本当にすごいですよね。私、手先はあまり器用じゃなくて……、本当に尊敬します!」

……なんか、騙されてるような……