真希奈は……、あまり人との会話が得意ではないようだった。
俺にはそうでもないのだが……、なんというか、言動がきついのだ。
最初は来たばかりで大人しかったのだが、ゆっくりと、真希奈は自分を取り戻していった。
それは……、いいことのはずなのに……

灰奈 「真希奈さん……、あ、あの……」
真希奈 「何よ。なんではっきり言わないの?」
灰奈 「そ、そういうつもりではなくて……、不快な思いをさせてしまって、すみません……」

「どうしたんだ? 二人とも……」

灰奈 「櫂さん……」
真希奈 「何よ、櫂に頼るわけ?」
灰奈 「ち、違います……、そういうわけでは……」
「落ち着けって。何があったんだ?」
灰奈 「あ、あの……、私の言葉で、不快な思いをさせてしまったみたいで……」
真希奈 「じゃあ、なんで謝ってたわけ? わたしがなんで怒ってたのか、わかってないんじゃん!」
灰奈 「あっ、あの……、それは……。すみません……」
「真希奈っ。……ちゃんと、言うんだ」
真希奈 「……その子が。その子が……、……わたしの、髪を……」
「髪? 灰奈、なんて言ったんだ?」
灰奈 「あ、あの……、髪が、短くて……、綺麗ですねって……、素敵ですって……、お話、したんです……」
「良かったじゃないか、なんで怒るんだ?」
真希奈 「自分の髪が長いからって……」
「灰奈は、そんなつもりで言ったんじゃないよ」
真希奈 「でも……、馬鹿にされた、気がして……」
「そっか。灰奈、戻っていいよ。灰奈は悪くないから」
灰奈 「あ、あの……、すみませんでした……」

真希奈 「……なんで、あの子をかばうの?」
「かばったんじゃないよ。灰奈は悪くない。
 灰奈は、結果として真希奈に嫌な思いをさせてしまったかもしれないけど、思ったことを言ったんだ。
 本当は真希奈に笑ってほしかったんだ」
真希奈 「…………」
「髪、短いのが嫌なのか?」
真希奈 「……いや……。いやだったの……、多分……」
「……そっか……」
真希奈 「伸ばしたかったの……。でも……
 ……よく、覚えて、ないけど……、伸ばせなかったの……」

……これ以上は、良くない……。
真希奈はまだここに来て数日しか経ってないのに……、思い出しかけてる。