窓から差し込む月明かりの中で、彼女の白い肌はより一層輝いて見えた。

灰奈 「あの……、大丈夫、ですか……?」
「……何が?」
灰奈 「ええと、その……、なんでしょう……
 すごく、ドキドキしてしまって……、頭が回らないんですが……」

灰奈はすごく緊張しているようで、この状況にまだ耐えられないらしい。

灰奈 「あの……、その、私で……大丈夫でしょうか……?」
「ああ。灰奈がいいんだ。俺は灰奈が好きなんだから……」
灰奈 「あ……う、嬉しい……です……」

灰奈はそう言って少しだけ頬を赤く染める。……けれど、すぐに何か疑問点に行きついたようだった。

灰奈 「あれ……? つ、つまり……、私がどういう形状でも、だ、大丈夫……と……」
「え、形状?」
灰奈 「あ、あれっ? 櫂くんは私だから、好きだって、言ってくれたので……その……。
 わ、私が……、猫とかでもいいのか、なぁと……」
「……猫なの?」
灰奈 「えっ、猫じゃないです」
「…………」
灰奈 「にゃ、にゃー……」
「……せめて人間がいいです」
灰奈 「あ、あっ、そ、そうですよね……っ! すみません、変なこと言いました……!
 じゃ、じゃあ……」

『じゃあ』とか言ってる。
このままだとわけの分からない会話で引っ張られてしまいそうで、俺は灰奈を現実に戻してやる。

灰奈 「え、あっ……。ちゅ……ん……ふあ……。
 わあ……、キス……、でした……」
「キスでしたね。……嫌だった? やめようか?」
灰奈 「やっ……、やだ……、です……。も、もう一回……、して、ください……」

もう一度、灰奈と口づけを交わす。

今はまだぎこちなくても、二人のテンポでゆっくりと進んで行こう……