「……ちゃんと見るのは初めてだけど、本当に紡が作ってるんだな……」
「なぁに? 信じてなかったの?」
「そうじゃないよ。見直したって言うか……、すごいなって……」

部屋自体はとてもちらかっていたけれど、紡の裁縫捌きとやらはすごかった。
机の上で型紙のような紙を当ててしるしをつけると、一気にハサミで切っていって。
細い針で一気に仮縫いを済ませて、ミシンをすごいスピードでかけていく。
その一連の動作に無駄はなく、俺はただ傍できょとんとしながら見ていることしかできなかった。

いつもの紡のテンションなら、針に糸を通せなくてわめいたり、何か失敗をして泣きだしたり……、
遂には疲れたと言って眠ってしまいそうなものなのに。
今だけは、真剣そのものというか……

「……その集中力を何か他のことに生かせればいいのに……」
「なぁにっ? ちょっと聞こえなかった!! もう一回言ってみて!!」
「紡はすごいなぁって言ったんだよ」
「かいー、嘘は良くないんだよぉー?」