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櫂 |
「……ちゃんと見るのは初めてだけど、本当に紡が作ってるんだな……」 |
紡 |
「なぁに? 信じてなかったの?」 |
櫂 |
「そうじゃないよ。見直したって言うか……、すごいなって……」 |
部屋自体はとてもちらかっていたけれど、紡の裁縫捌きとやらはすごかった。
机の上で型紙のような紙を当ててしるしをつけると、一気にハサミで切っていって。
細い針で一気に仮縫いを済ませて、ミシンをすごいスピードでかけていく。
その一連の動作に無駄はなく、俺はただ傍できょとんとしながら見ていることしかできなかった。
いつもの紡のテンションなら、針に糸を通せなくてわめいたり、何か失敗をして泣きだしたり……、
遂には疲れたと言って眠ってしまいそうなものなのに。
今だけは、真剣そのものというか……
櫂 |
「……その集中力を何か他のことに生かせればいいのに……」 |
紡 |
「なぁにっ? ちょっと聞こえなかった!! もう一回言ってみて!!」 |
櫂 |
「紡はすごいなぁって言ったんだよ」 |
紡 |
「かいー、嘘は良くないんだよぉー?」
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