静かな部屋にみちるの足音が響く。きっと、そんなに広い場所ではないのだと思う。
けれど……、酷い匂いがした。誰も掃除をしていない森の中の教会なら、仕方ないのだろうか……?

みちる 「……いいわ」
「ああ……」

嬉々として、目を開ける。この先には希望が待ち構えているはずと信じていたから。

「……え……?」

何が起こっているのか、全くわからなかった。
みちるは、俺の目の前に立っていた。月明かりを浴びて、流れるような長い髪がキラキラと輝いていた。
みちるは綺麗だった。
あの時……、初めてみちると会った時を思い出した。あの時もみちるは、こんな風に真っ直ぐに俺を見ていた。

「……み、ちる……」

その時は、こんなに悲しそうな顔はしていなかったけれど。
その時は、笑顔で差し出してくれたその手に、
そんな……、綺麗な銀色の短剣なんて、持ってはいなかったけれど。

みちる 「どうしてかしら……。わかりきっていたことだったのに……、貴方を思うと……心が痛んだ……」
「みちる……、何を……言って……」

もう一度、自分のしてきたことを思い返す。
過去を、思い出して……
みちるは、わかってくれて……外に出る方法を、教えてくれるって。

「みちる……、なんで……、なんでなんだよ……」

一時たりとも、みちるを疑わなかった。
外に出られるとばかり、思っていた。そうなる未来が当たり前で、他の考えなんてなかった。

みちる 「私は何度も……警告したでしょう……?」
 それから、こうも言ったわ。外には、出られないって……。その言葉に偽りはないの」

「……みちる……」
みちる 「……さよなら、櫂……
 助けられなくて……ごめんなさい……」

苦しそうに呟いて、すごく、辛そうな顔で。
みちるは、剣を持つその手を、振りかざした。