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静かな部屋にみちるの足音が響く。きっと、そんなに広い場所ではないのだと思う。
けれど……、酷い匂いがした。誰も掃除をしていない森の中の教会なら、仕方ないのだろうか……?
嬉々として、目を開ける。この先には希望が待ち構えているはずと信じていたから。
何が起こっているのか、全くわからなかった。
みちるは、俺の目の前に立っていた。月明かりを浴びて、流れるような長い髪がキラキラと輝いていた。
みちるは綺麗だった。
あの時……、初めてみちると会った時を思い出した。あの時もみちるは、こんな風に真っ直ぐに俺を見ていた。
その時は、こんなに悲しそうな顔はしていなかったけれど。
その時は、笑顔で差し出してくれたその手に、
そんな……、綺麗な銀色の短剣なんて、持ってはいなかったけれど。
みちる |
「どうしてかしら……。わかりきっていたことだったのに……、貴方を思うと……心が痛んだ……」 |
櫂 |
「みちる……、何を……言って……」 |
もう一度、自分のしてきたことを思い返す。
過去を、思い出して……
みちるは、わかってくれて……外に出る方法を、教えてくれるって。
櫂 |
「みちる……、なんで……、なんでなんだよ……」 |
一時たりとも、みちるを疑わなかった。
外に出られるとばかり、思っていた。そうなる未来が当たり前で、他の考えなんてなかった。
みちる |
「私は何度も……警告したでしょう……?」
それから、こうも言ったわ。外には、出られないって……。その言葉に偽りはないの」 |
櫂 |
「……みちる……」 |
みちる |
「……さよなら、櫂……
助けられなくて……ごめんなさい……」 |
苦しそうに呟いて、すごく、辛そうな顔で。
みちるは、剣を持つその手を、振りかざした。
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