「あ……っ、ごめん!」

 夜が使った食器を全て片付けてくれていた。
 
 「片付けまでさせてしまって……こっちでやるべきだったのに」

 「ううん、これくらい大丈夫だよ」

 「住まわせてもらうんだし、いつもやってるから」

 「手伝うよ」

 「本当っ!? じゃあ、そこにあたしのスマホあるから」

 「ん? 何か使うの?」

 「ううん。画面つけると、クエストが終わってると思うから、
  もう一回ってボタンを押して、あとオートボタン押してくれる?」

 「え……」

 想定外の『手伝い』に絶句する。

 「それ、俺が片付けして、夜がやったらよくない?」

 「ううん、大丈夫! オートでだけ回してて貰えるとめっちゃ助かる」

 「いや、人のスマホ触るのって、ちょっと抵抗があるし……」

 「大丈夫、あたしのスマホ、ゲームしか入ってないから」

 「それもどうなの……」

 仕方なく、電源ボタンを押してみる。
 すぐにゲームの画面が立ち上がる。

 「もう一回……えっと、……こう? オート……?」

 「右上!」

 「あ、えっと。できた……! 動いた……」

 画面が勝手に動き出す。
 最近のゲーム、オート機能なんてあるのか……

 「陽太くん、あんまりゲームとかしないの?
  スマホゲームとか結構流行ってるけど」

 「友達は結構やってるけど、俺はあんまり。続かないんだよね」

 今までも勧められることはあったけど、時間がなくて、気付くと
 友達ともかなり差がついてやめてしまう。

 「夜がやってることのほうが驚きって言うか……。
  あんまりこういうの、やらなそうなのに」

 「え、めっちゃやってる」

 「そうなんだ。このゲームだけ?」

 「……え、いや」

 「あー、一応それがメインだけど、少し強くなってきたから余裕あって」

 「メイン……? 余裕……?」

 「こないだリリースになったゲームを結構やってるんだけど、
  それはオート機能ついてないから」

 「だからこういう、何かしながらの時間はオートで回せるゲーム回しとくの」

 「今日は23時からイベントやるゲームもあって、
  それまでにいろいろ終わらせないと……」

 「……仕事なの?」

 「ゲームだよ!」

 「めっちゃ忙しそうだし、俺が片付けやるよ」

 「大丈夫っ! 大丈夫! 片付け終わった!」

 「委員長がこんなにゲーマーだったとは知らなかったな……」