「私だよ」

 「え……」

 「真犯人、私なんだよ」

 「伊鶴。何を言って……」

 「私が殺したんだー。
  実は。それをさー、透子が罪、被っちゃったんだよねー」

 「だから、真犯人は私なの」

 「伊鶴!」

 思わず、声を荒げてしまう。

 「伊鶴は、犯人じゃない。冗談でも、そういうこと言うの、やめてくれ」

 「えー」

 「それ、前に言ってたことでしょ?
  誰かが、代わりに真犯人になればいいって」

 「……そう」

 「私はね、透子の代わりに真犯人になるために、あの洋館に来たんだよ」

 「そのために、会いたくもない父親脅して、住まわせてくれって無理に
  頼んだの」

 「伊鶴……なんで……」

 「私ね、何もないんだよ。母親は消えて、父にも疎まれてて」

 「大切な物なんて何もない。だから、私が犯人になれば、ちょうどいい」

 「ちょうどいいって、なんだよ!」

 「……怒らないでよ」

 「怒るよ。そんなの……。それに、そんなの、透子は認めないと思う」

 「俺だって、誰も、そんなの認めないよ」

 「私だって、別に刑務所に入りたいわけじゃないんだよ」

 「ただ、事件が起こっている以上、誰かが犯人でなきゃならない」

 「そんなの、間違ってる。
  透子がやってないなら、真犯人を見つけるしかない」

 「警察が捜しても見つからない真犯人をどうやって見つけるの?

 「無理だよ。日が経てば、どんどん証拠はなくなっていく。見つけづらくなる」

 「そうして何年も経ったらどうするの?」

 「それは……」

 「透子は、多分何があっても話さないと思うよ。事件のこと」

 「覚悟を持って、自分が犯人だって言ったんだから」

 「だから、透子を救うには、誰かが透子の代わりに真犯人になるしかない」

 「…………

 誰かが、真犯人に――?